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LME(LME METAL EXCHANGE)//01

 

ロンドン金属取引所(LME)は1877年に設立され、世界の非鉄金属における先物取引の約85%をカバーする世界で最も伝統的な取引所の一つです。その取引は、会員の一人が取引所の床にチョークで大きな輪を描き、その輪のまわりに取引したい者が集まって始まりました。これがリング取引で、現在でも引き継がれています。もともとは非鉄金属のプロだけが参加する閉鎖的な市場でしたが、1980年代後半からの銀行、証券会社、ヘッジファンドの本格参入が市場に流動性をもたらし、取引規模が飛躍的に拡大しました。現在では世界の商品先物市場のランキングで常に上位の取引高を誇っています。

 

LMEは基本的には「相対取引」であり、売り手と買い手が合意すればどの時間帯でも取引が可能です。つまり24時間、取引が可能なマーケットです。LME取引は時間帯別に「プレマーケット」、「リング取引」、「カーブ取引」、「場外取引」に分けられます。なかでもリング取引はLMEの象徴ともいえるものです。リング取引では、メタルごとに午前(ファースト・セッション)と午後(セカンド・セッション)に2回ずつ、合計4回取引が行なわれます。それぞれのメタルごとの取引時間は5分間です。午前の各メタルの2回目の取引(セカンド・リング)の取引が終了したところでその日の公式買い価格および売り価格が発表されます。その中でも売り価格はセトルメント価格と呼ばれ、世界における現物取引のほとんどがこの価格を利用しているといわれるほど非常に重要な指標価格です。

 

LME自身はLMEの役割を次のように考えています。

  • 主に非鉄金属関係会社からなる市場参加者がベースメタル価格変動に起因するリスクに対してヘッジする機会を提供すること。(価格ヘッジ市場)

  • 非鉄金属関係の世界市場における価格決定に参考価格を提供すること。(国際価格決定市場)

  • 市場参加者が公認ブランドの非鉄金属現物の受渡し、引渡しを実行できるように適切な保管施設を提供すること。(現物取引市場)

ここではそのひとつめの機能である価格ヘッジについて説明したいと思います。

 

消費者(製造業者)にとっては製品の生産に専念し、製造コストを管理することが課題であり、投機を行なう意思は全くありません。それにもかかわらず、原材料の数量的な買い越しなどにより必然的にメタル価格の大きな変動のリスクにさらされることになります。メタル価格の変動の幅が製造マージンよりも大きくなることが十分に起こりえます。そのために自らをリスクから防御する必要性が生じ、メタル原料のバランス分をLMEにヘッジするという防衛手段を講じることになります。

それでは商品の生産から販売に至るサイクルの中でどのようなリスクが存在しているのでしょうか。このリスクは大きく価値リスク、市場リスク、信用リスク、流動性リスク、予期せぬ損失リスク、デリバリー・リスクに関連するものに分類できます。価値リスクには生産コストの変化、需給バランス、競争激化、インフレの進行等が含まれます。マーケット・リスクは価格リスク、金利リスク、為替リスクがあります。信用リスクはデフォルトのリスクで、取引の相手方の信用力の評価、与信枠により管理されるものです。流動性リスクは市場において特定の商品がすばやくかつ適正な市場価格で取引できず、既存の価格とかけ離れた市場価格で約定されてしまうリスクです。予期せぬ損失リスクとは、事故、火災、盗難等によるものです。デリバリーに関連するものでは生産者によるフォース・マジュールの発動、ノンデリバリー、遅延、数量・品質等の誤配送が挙げられます。この分類に「怠惰」、すなわち何もしないリスクも加える必要があると考えます。

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