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LME(LME METAL EXCHANGE)//02
LMEのヘッジ・オペレーションについての説明に入る前に、LMEの基本要素について概説します。まず、LMEは上場フォワード・マーケットであり、CME、ICE、TOCOMに代表されるようなフューチャーズ・マーケットとは一線を画します。同じくフォワード・マーケットを代表するものとしてインターバンクの外国為替市場がありますが、こちらはLMEのような公開された取引所さえもたず、正確にいえば「場外市場」であって「取引所市場」ではありません。フォワード・マーケットでは受け渡しが行なわれる期日を何月何日というように日別で確定させて、その日に現物の受け渡しとこれに対する支払い、もしくは差金決済が行なわれます。
LMEは限月制ではなく、期日制です。LME契約を履行するための受渡し期日をプロンプト・デートと呼びます。取引の清算はプロンプト・デートの2営業日前までに行なう必要があります。LME取引において最も流動性が高いプロンプト・デートは3ヶ月先物です。この3ヶ月先物は歴史上非常に重要な指標価格で、これは19世紀中頃、チリやマレーシアからイギリスへの銅や錫の納入期間が約3ヶ月であったことをベースにしています。この価格の重要性は今日でも変わっていません。
またLMEでは銅・アルミが123ヶ月先まで、ニッケル・鉛・亜鉛が63ヶ月先まで、アルミ合金が27ヶ月先まで、錫が15ヶ月先まで取引が可能です。取引可能なプロンプト・デートは、キャッシュから3ヶ月先物までは毎日、3ヶ月から6ヶ月まではすべての水曜日、6ヶ月より先は第3水曜日プロンプトの取引が可能です。どの受渡月においても、第3水曜日の取引が最も活発で、かつ流動性が高くなっています。これは第3水曜日がその月を代表するプロンプト・デートであるからです。例えば、ただ単に9月ものといえば、9月の第3水曜日を意味します。
契約当事者は受渡し期日より先にポジションを清算したとしても、当該受渡日より以前にその契約の履行を求めることはできません。もちろんこの約束された受渡しの期日を他の日へと変換する取引は可能で、頻繁にこのような取引が行なわれています。このような取引はキャリー取引と呼ばれ、期近のメタルを買うと同時に期先のメタルを売るボローイングと、期近のメタルを売ると同時に期先のメタルを買うレンディングとに分類されます。
次に、ヘッジにおいてはスプレッドをいかに有効に利用するかということが原点となります。スプレッドにはコンタンゴ(順鞘)とバックワーデーション(逆鞘)があります。コンタンゴは期先の価格のほうが期近の価格よりも高い状況のことをいいます。この期先と期近のスプレッドの構成要素は金利と倉庫保管料です。現物が市場に潤沢にあればコンタンゴ・マーケットが維持されるケースが多くなります。この場合の先物理論価格は次のようになります。
先物理論価格=現物価格+市場調達金利×先物の受渡しまでの日数÷365+保管料
実際には市場のコンタンゴがキャリー・コスト(金利+保管料)の100%をカバーできる状況にはまずなりません。もしそのような状況になれば、すべての市場参加者が現物を購入すると同時に先物に売りポジションを建てることでキャリー・コストをカバーしようとするからです。また同様の理由により、市場でのスプレッドが計算上のスプレッドよりも高いことはまずありえません。