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非鉄金属業界の現状~メタル別の国内需給

 

   銅

2011年のデータでは日本の銅消費は世界消費の5%を占めていました。一方、日本の銅地金(電気銅)の供給は、国内の銅製錬所で生産されるものが大部分であり、その主要原料である銅鉱石はチリ、ペルー、インドネシアなど海外からの輸入に頼っています。年間生産量は約150万トンでほぼ横ばい推移です。電気銅は電線メーカーや伸銅品メーカーに販売されます。これら電線や伸銅品は中間製品と呼ばれ、その後通信・電力、電気・機械、自動車・船舶、建設、金属製品等さまざまな分野で最終製品となります。特に電子部品や自動車部品分野では日本の伸銅メーカーが世界シェアの大半を占めています。

アルミニウム

2011年のデータでは日本のアルミ消費は世界消費の4%を占めていました。オイルショック前の日本は、鉱石であるボーキサイトを輸入してアルミを製錬する世界でも有数のアルミ生産国でしたが、アルミ製錬には大量の電力が必要となるため、2014年3月の日本軽金属蒲原工場の閉鎖を持ってアルミ新地金の国内生産はゼロとなりました。そのため地金供給の約65%である280万トンを輸入に頼っていますが、リサイクルの強化により残り35%に相当する100万トンを二次地金、もしくは二次合金地金でまかなっています。アルミ地金は中間製品であるアルミ圧延品、押出材、電線、鋳造品、ダイカスト品等に加工され、さらに輸送、土木建築、金属製品、食料品、電力、化学等の幅広い分野で最終製品となります。

ニッケル

2011年の日本のニッケル消費は世界消費の11%を占め、中国に次ぐ世界第2位となりました。(翌2012年には東日本大震災の影響もあり、9%に落ち込むも、2013年から2014年にかけて14-15%に回復してます。)その用途はステンレス鋼(65%)、特殊鋼(24%)、メッキ(8%)、化学(3%)です。国内の生産面では100%輸入原料であるニッケル鉱石を日本冶金、住友金属鉱山、太平洋金属がステンレス鋼原料であるフェロニッケルに加工しています。またニッケル品位75-80%程度のニッケルマット、低品位ニッケル酸化鉱から生産されるニッケル・コバルトのミックス・サルファイドを輸入し、住友金属鉱山が特殊鋼用のニッケル地金を生産しています。

世界のニッケル消費量は年率6%-7%で伸びており、中でも最大の消費国である中国では2014年に前年比10%増の伸びを示しています。その一方で、これまで世界最大のニッケル鉱石生産国であったインドネシアが2014年1月に発動された鉱石輸出禁止措置により、2013年の60万トンから12万トンまで減産しました。これは高付加価値化政策の一環であり、2015年以降に様々な製錬プロジェクトが立ち上がりますが同国のインフラ不足や資金調達の問題、政治的リスクから不確実性が高いとみられています。フィリピン、マダガスカル、ニューカレドニア等での増産もインドネシア減産分を補うには至らず、2014年のニッケル鉱石生産量は前年比16.4%減の201.5万トンと予測されています。ニッケルは長期的な供給不足に転じる可能性が高い金属です。

亜鉛

亜鉛と鉛も世界的に需要が堅調で、需給の引き締まり感が強くなっています。世界での亜鉛の最大用途は自動車ボディーになる亜鉛メッキ鋼板用で亜鉛消費の半分弱を占めています。日本では60%強が亜鉛メッキ鋼板用で、次いで16%が真鍮・青銅等の銅合金用、11%が無機薬品用、ダイカスト用が7%を占めています。国内亜鉛地金(電気亜鉛と蒸留亜鉛)の生産は海外の亜鉛鉱石に頼っています。

亜鉛地金生産量は2011年実績54.5万トンで世界生産の約4%、地金消費は50.1万トンで同じく世界消費の約4%となっています。最大消費分野の亜鉛メッキ鋼板は、自動車や建材等屋外で使用される製品用の溶融亜鉛メッキ鋼板、家電など屋内で使用される製品用の電気亜鉛めっき鋼板に分けられます。

鉛の最大用途はバッテリーで鉛需要の80%を占めています(新車用バッテリー10%、自動車取替用バッテリー40%、工業用バッテリー30%)。次いで無機薬品(酸化鉛)、はんだ、等です。一方、鉛地金(電気鉛)製造では鉛鉱石から生産する一次製錬と、スクラップから生産する二次精錬があります。バッテリーのリサイクルが義務付けられたため、廃蓄電池を原料に電気鉛を生産する割合が増加しています。

錫の市場は小さく、2011年の世界の電気錫生産は36.7万トン、消費は38.3万トンです。ニッケル同様、錫もインドネシアが主要生産国であり、鉱石の輸出を2014年から禁止しています。この背景には国内で製錬・加工を行なうことで資源の付加価値を高め、国内生産の拡大を促進する狙いがあります。ただし、錫の製錬はニッケルほど難しくはないため、早晩インドネシアの電気錫生産が増加する可能性が高いとみられています。LME錫価格も2014年4月下旬に頭打ちとなっています。日本では電気錫生産をほぼ行なっておらず、約99%の原料を輸入に頼っています。一方、電気錫消費は2.7万トンで世界の7%を占めています。内需の60%をはんだが占め、次いでブリキが20%程度を占めています。

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