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about Hedging // 04
オプションによるヘッジ // 02
一方、消費者のヘッジは鉱山会社とは逆に、もし製品の原料コストが決定している場合には、市場価格が原料コストを下回ったときに利益となり、逆の場合には損失になります。したがって、消費者は原料コスト以下であれば買いヘッジを行ない、先物での現物購入価格を固定したいと考えます。しかしながら、通常の先物の買いヘッジでは価格がさらに下落したときにそのメリットを享受できません。このような場合に、消費者はコール・オプションを購入することを選択します。
アルミ消費者の原料コストを2000ドルと仮定します。4月1日時点での市場価格は1700ドルで、原料コストを300ドル下回っています。そこでストライク・プライス1900ドルのアウト・オブ・ザ・マネーのコールを3ヶ月先の7月の第3水曜日プロンプトで購入します。プレミアムはトンあたり100ドルとします。
(もし価格が上昇した場合)
7月の第1水曜日(7月1日)のデクラレーション・デートにおいて、7月第3水曜日(7月17日)プロンプトの価格が2000ドルを上回った場合には権利を行使することになります。すでにプレミアム100ドルを支払っているため1900ドルストライク・プライスのコールの権利行使は2000ドル以上の価格でなければ意味がありません。価格が2400ドルまで上昇した場合、市場価格2400ドル-(1900ドル+プレミアム100ドル)=400ドルの利益を得ることになります。しかし実際にはこの消費者の原料コストは2000ドルですので、損益はゼロとなります。この時点でオプションを行使した場合には7月の第3水曜日プロンプトで1900ドルの買いポジションが建つことになります。このキャッシュ・デートまでに現物の手当てができた場合にはこの買いポジションを売り閉じることになります。いくらで購入しようとも損益はゼロのままです。下の表では7月13日に2500ドルで現物購入した場合を想定しています。
(もし価格が下落した場合)
価格が1900ドル以下になれば、オプションの権利を放棄した上で、LMEで先物を買って利益を確定することになります。7月の第1水曜日(7月3日)のデクラレーション・デートにおいて価格が1700ドルまで下落した場合、原料コスト2000ドル-(市場価格1700ドル+プレミアム100ドル)=200ドルが利益となります。
現物 LMEコール・オプション
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買 原料コスト 買
取引日:7月13日 取引日:4月1日
2500ドル 2000ドル 1900ドル
(7月15日)
差損:500ドル 支払プレミアム:100ドル
LME
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買 売
取引日:7月1日 取引日:7月13日
1900ドル 2500ドル
(7月15日) (7月15日)
差益:600ドル
オプションによるヘッジ // 03
オプションを組み合わせたヘッジにミニ・マックスがあります。これはゼロ・コスト・オプションです。ミニ・マックスの利用によりオプション取引を成功させるチャンスを最大にできる上に、キャッシュフローをも助けることができます。金融業界ではフロアー、キャップ、シーリング、バリアーなど様々な呼び方があります。
まず生産者が価格下落の懸念があるときにアウト・オブ・ザ・マネーのプット・オプションを買ってヘッジを行ないたいが、その資金がないときにアウト・オブ・ザ・マネーのコールを同時に売る方法があります。この時にプットとコールを同じ数量、同じプロンプトで行ない、プレミアムが相殺できるストライク・プライスを選択します。価格が下落してプットを行使する、あるいは価格が上昇してコールが行使される、いずれの場合でも売りのポジションができることになります。この場合、コールが行使されてLMEで売りを行なうことになろうとも、もともとアウト・オブ・ザ・マネーのコールであるため少なくとも現在の価格よりは高い価格で売ることができることになります。
一方、消費者が価格上昇の懸念があるときにアウト・オブ・ザ・マネーのコール・オプションを買ってヘッジを行ないたいが、その資金を抑えたいときにアウト・オブ・ザ・マネーのプットを同時に売る方法があります。同様にプレミアムの支払いをせずにすむようにストライク・プライスを設定すれば、キャッシュフローも助かります。この場合はどちらのオプションがヒットしてもLMEに買いのポジションができることになります。価格が上昇してもコールを買っていることでリスクは限定され、価格が下落した場合でも現在の価格よりは安く購入できることになります。
ここでは銅鉱山会社の生産コストを5000ドルと仮定します。4月1日時点での市場価格は5300ドルで、生産コストを300ドル上回っています。そこでストライク・プライス5100ドルのアウト・オブ・ザ・マネーのプットを3ヶ月先の7月の第3水曜日プロンプトで購入します。プレミアムはトンあたり100ドルとします。この100ドルのプレミアムが相殺できるコール売りの水準を確認したところ、7月の第3水曜日プロンプトでは5500ドルのコール売りのプレミアムが100ドルであったため、この水準のコールを売ることにしました。プレミアムの受け払いは発生しません。
(もし価格が下落した場合)
7月の第1水曜日(7月1日)のデクラレーション・デートにおいて、7月第3水曜日(7月15日)プロンプトの価格が4800ドルまで下落したためにプット買いの権利を行使しました。それにより7月15日プロンプトで5100ドルの売りポジションが建てられます。同時に、5500ドルのコールはオプション・テイカーにより放棄されます。その後7月15日に現物が当日のキャッシュ・セトルメント価格(4800ドル)で販売できたため、7月17日プロンプトの売りポジションを買い閉じました。この時、現物販売では200ドルの差損が発生しますが、LMEでは300ドルの差益が確保できるため全体では100ドルの利益を上げることができます。
(もし価格が上昇した場合)
同じケースでもし7月の第1水曜日(7月1日)のデクラレーション・デートにおいて、7月第3水曜日(7月15日)プロンプトの価格が5500ドルまで上昇すれば、コール・オプションのテイカーは権利を行使します。同時に5100ドルのプットは放棄することになります。この場合は7月15日プロンプトで5500ドルの売りポジションが建つことになります。その後7月13日に現物が当日のキャッシュ・セトルメント価格(5600ドル)で販売できたため、7月15日プロンプトの売りポジションを買い閉じました。この時、LMEでは100ドルの差損が発生しますが、現物販売では600ドルの収益が確保できるため、全体では500ドルの利益を上げることができます。このように価格の下落に対してはプットの買いでプロテクトし、価格が上昇してコールが行使されても通常の売りヘッジにより収益を確定するよりも上昇に対するバッファを確保することができます。
現物 現物
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生産コスト 売 生産コスト 売
取引日:7月13日 取引日:7月13日
5000ドル 4800ドル 5000ドル 5600ドル
①差損:200ドル ②差益:600ドル
①価格が下落➡プットを行使、コールは放棄
LMEプット・オプション LME -------------------------------------------- -----------------------------------------------
買 買 売
取引日:4月1日 取引日:7月13日 取引日:7月1日
5100ドル 4800ドル 5100ドル
(7月15日) (7月15日) (7月15日)
支払プレミアム:100ドル 差益:300ドル
②価格が下落➡プットを行使、コールは放棄
LMEコール・オプション LME -------------------------------------------- -----------------------------------------------
売 買 売
取引日:4月1日 取引日:7月13日 取引日:7月1日
5100ドル 5600ドル 5500ドル
(7月15日) (7月15日) (7月15日)
受取プレミアム:100ドル 差損:100ドル