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非鉄金属業界の現状~中国の台頭

日本の非鉄金属需要はLME上場の6種金属において、概ね世界2位から5位を占めています。ただし、その割合は10%以下です。一方で2011年の中国の消費は銅で世界の40%、アルミ43%、ニッケル40%、亜鉛42%、鉛44%、錫49%と断トツの一位です。ちなみに2003年のデータでは銅20%、アルミ19%、ニッケル11%、亜鉛21%、鉛17%、錫24%でした。さらに銅で検証してみると、1990年の世界銅消費は1088.6万トンで、その14%の152万トンを日本が占め、中国消費は5%の56万トンにすぎませんでしたが、2000年には世界銅消費が1518.7万トンに拡大し、中国消費は187.7万トンで12%のシェアとなりました。一方、日本消費は9%の134.9万トンに落ち込みました。この傾向はさらに加速度的に進展し、2002年には中国は米国を抜いて世界第一の銅消費国となりました。2010年の世界銅消費は1859.8万トンに拡大、そのうち中国消費は738.5万トンの40%、日本消費は106万トンの6%となりました。2010年以降も中国の銅消費は7%(2011年)、4%(2012年)、5%(2013年)と高い伸び率を継続し、2013年の世界消費に占めるシェアは47%に達しました。2011年以降の世界銅消費の伸びの85%は中国消費の伸びに起因しています。

 

同時に2000年までは世界シェア9%程度であった電気銅生産量は2005年に16%、2010年に25%、2013年には30%と加速度的に増加しています。中国では急速な経済成長に伴い、資源の安定供給が必要不可欠となっています。2000年代に入って以降、年率平均で10.2%の高い経済成長を実現し、2010年代に入ってからはやや減速したものの、ここ3年間は7%台の安定成長を維持しています。これに伴い、金属・鉱物資源の消費も急速に拡大しており、中国は主要な非鉄金属について世界第一位の消費国となっています。ただし、国内での鉱物資源生産量では内需の伸びを十分に賄いきれず、海外での資源開発に活路を求めようとしています。資源供給元であるアフリカ・中南米の一部の国では政変やテロ等の政治的不安定に直面している他、資源ポテンシャルの高い東・南シナ海では周辺諸国と領土の帰属を巡り摩擦が発生しています。

 

また、中国政府は資源安定供給とともに、国家エネルギー安全保障政策の重点政策の一つとして国家備蓄を進めており、対象品目の中に金属が含まれています。例えば、2012年から2013年にかけて中国国家備蓄局がレアアース、アルミニウム、亜鉛、銅、アンチモン、ニッケル等の買上げ備蓄を行なっている模様です。備蓄制度の目的は国防及びマクロ経済調整とされています。中国の急速な経済発展により原材料不足が顕在化し、マクロ経済調整が必要になったとみられています。備蓄量やその予算は国家機密法により非公開となっていますが、中国地元紙によると第一四半期だけで中国の年間消費の約5%に相当する50万トンを買い付けたということです。その証拠としてLMEの銅在庫が年初から6割、上海取引所在庫が3割減少しました。ただ国家備蓄局が単純な備蓄だけでなく、相場が安い時に買い入れ、高い時には放出するという投機的もしくは市場操作的な行動をとっている節があり、国際銅市場が攪乱されています。中国が経済的に台頭する前の非鉄金属市場は、大手製錬会社が欧米・日本の先進諸国に集中していたため生産調整機能が速やかに働き、相場の波も比較的穏やかでした。中国が世界最大の非鉄金属消費国であると共に、国内に製錬業者や鉱山会社を多数抱える最大の供給国となった今、市場は常に波乱含みの状態にあります。

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